腱鞘炎(けんしょうえん)
腱と腱を覆っている腱鞘に炎症や通過障害が起こり、痛みや動きにくさを生じます。手足に起こることが多いです。主に手に多く発症し、使い過ぎが原因で、スポーツや仕事で指をよく使う仕事の人に多いのが特徴です。出産後や更年期にも多くおこり、女性ホルモンの関連も指摘されております。治療は、局所の安静、サポーター、投薬、腱鞘内ステロイド注射、衝撃波、超音波などの保存的療法が行われます。保存的治療でも改善のない場合は、肥厚した腱鞘を切開する手術があります。また多くの箇所が腱鞘炎になると、全身的に炎症が起こしやすくなっている可能性があり薬、漢方、プラセンタ注射などの全身をターゲットとした治療も行っております。
ヘバーデン結節
中年期以降の女性に多く発症します。手指の第一関節(DIP)の痛み、こわばり、変形が起こります。使いすぎや加齢などが原因となりますが、更年期以降の女性に多いため、女性ホルモンの関与も指摘されております。初期は痛みや腫れがあり、進行すると曲がってきます。曲がって固まってくると、関節の動きは悪くなりますが、痛みは減少することが多く、指を屈曲する方向に曲がり、日常生活はさほど困らないため手術になることはまれです。指の変形予防のためテーピングや装具、炎症を抑える薬、リハ、注射などの保存的治療があります。女性ホルモンの関与から、治療・予防のため、女性ホルモン、プラセンタ、大豆製品などは効果があるかもしれませんが、効果は不明です。痛みが強く、日常生活に支障をきたす場合は、関節固定術、人工関節手術などの方法があります。
関節リウマチ
女性に多く、免疫が自分の体の一部に反応する膠原病の一つです。初期には手指の第2関節(PIP)が対照的に腫れ、朝、こわばるような症状が現れます。痛みや腫れのために日常生活に支障がでてきます。関節だけでなく全身の病気として、貧血症状が現れたり、体がだるくなったり、微熱がでることもあります。診察、採血検査などで診断します。治療は、早期の薬物治療が基本となります。局所の痛み、炎症が持続する場合は、関節注射などを行っております。当院では、リウマトレックス(MTX)までの治療は行っておりますが、生物学的製剤の適応になるときは、他院を紹介しております。
テニス肘、ゴルフ肘
テニス肘はテニス、ゴルフ肘はゴルフをする人に多く発症する肘の痛みの総称で、それぞれ上腕骨外側上顆炎、上腕骨内側上顆炎といいます。
上腕骨外側上顆炎のほうが、頻度が多く、手関節を背屈、ペットボトルを開けたりする動作で肘外側の痛みが出ます。使いすぎ、加齢、外傷が誘因になっていることが多いです。エコーで、外側上顆に付着する短橈側手根伸筋腱周囲の血流増加や部分断裂を確認することが多いです。治療は、それぞれ負担を減らすような使い方、サポーター、炎症を抑える薬、ステロイド注射、筋緊張をとるリハビリ、損傷の修復を促進する衝撃波、超音波、PFC-FD注射などを行なっております。それでも改善ない場合は、手術治療があり、他院へ紹介します。
五十肩
中年以降、特に40-50歳代に多くみられます。関節を構成する部分(骨・軟骨・靭帯・腱)などが老化し、肩関節の周囲に炎症が起きることが原因と考えられています。
自然に治癒することもありますが、ときには日常生活に支障がでるばかりでなく、関節が癒着して動かなくなることもあります。急性期にはまず安静を心がけ、消炎鎮痛剤の内服、肩への注射が有効です。急性期を過ぎてからはホットパックなどの温熱療法、また拘縮(こうしゅく)治療や筋肉を強化するための運動療法を行います。リハビリでも効果がなく、拘縮が強い方は、サイレントマニピュレーション(関節受動術)治療も行っております。これは頸部神経に伝達麻酔、局所麻酔を行い、痛みや筋緊張が出ない状態にして固まった関節をさまざまな方向に動かしていきます。このときバリっと音がして関節包が切離されます。切離されると固まった関節の動きは大幅に改善されます。
しかし再度固まってしまうこともあり、リハビリが重要になります。それでも改善がない場合は、関節鏡下にて関節包切離という手術もあります。
肩腱板断裂
腱板は、肩のインナーマッスルといわれ、肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋という4つの筋で構成され、肩の安定性にかかわってきます。加齢により徐々に擦り切れる変性断裂は、無症状のこともありますが、痛みや肩が上がらなくあることもあります。薬やリハビリ、注射で、痛みの軽減や筋力増強を促します。それでも肩が上がらない場合は、腱板縫合やリバース型人工関節などの手術治療もあります。また比較的若い人で、ケガにより断裂し、肩が上がらなくなると、断裂した腱板は自然修復されにくいため、手術治療をお勧めします。
石灰沈着性腱板炎
腱板に石灰が沈着し、強い炎症を起こし、激痛になることがあります。予兆がないことも多いです。遺伝的素因や環境因子、加齢にて石灰が溜まると考えられています。 レントゲンやエコーで石灰を確認し、炎症を抑える薬や注射をします。
石灰が硬い場合は、以前から石灰が沈着しており、その一部が溶け出したことにより炎症が起こったと考えられます。また石灰が柔らかい場合は、最近溜まったものと判断します。柔らかい石灰の場合は、注射で取り出すことができる場合があります。炎症が治まれば痛みは軽減しますが、石灰が大きいと、肩を動かすときに肩峰と衝突(インピンジ)して、痛みを出す場合があり、専用の超音波器具で石灰を砕いたり、手術で取り除く治療があります。
外反母趾
足の親指が外側を向くことを外反母趾といいます。母趾の付け根に腫れや痛み、足の裏にタコ(胼胝)ができたり、第2趾とぶつかり歩きにくくなることがあります。扁平足や母趾が示趾より長い、つま先の細いヒール、肥満、筋力低下などが、誘因になります。治療は、先のゆったりとした靴、グーキョキパー体操、装具、手術があります。
扁平足
幼少時からの扁平足は、痛みは出にくいとされており、中年以降に発症するものは、女性に多く、アーチを吊り下げる後脛骨筋腱の機能低下、断裂などにより縦アーチが低下し、内くるぶしの下が腫れ、痛みが出ることがあります。アキレス腱が硬くなり、つま先たちがしにくくなり、悪化すると歩行障害となります。治療は、ストレッチ、足底板、重症では手術になることがあります。
足関節捻挫
足の捻挫は、捻挫の中で一番多い部位です。特に足の裏が内側を向き、足関節の外側を痛める捻挫が多いです。レントゲン検査で大きな骨折はわかりますが、靭帯や小さな骨折はレントゲンではわかりにくく、エコーで評価します。エコーでは、小さな裂離骨折や靭帯損傷の程度も評価可能で、重症度もわかりやすいです。受傷早期は、RICE(Rest 安静、Ice 冷やす、Compression 圧迫、Elevation 挙上)で二次損傷を最小限にする必要があります。特に冷やすと早く痛みが軽減する印象です。また重症度に応じて、外固定を行います。一定期間固定すると、関節が固まってしまい、動かすリハビリが必要になることがあります。数か月経っても痛みが改善せず、エコーで靭帯の血流増加があると、靭帯の修復がうまくいっていないことがあり、修復を促す衝撃波やPFC-FDなども選択肢になると考えます。靭帯断裂で不安定性がのこる場合は手術になることがあります。
変形性膝関節症
関節症は遺伝素因を背景として、使いすぎ、体重負荷、O脚、外傷などをきっかけに、軟骨磨耗が生じ、それが進行して発症します。O脚や高齢者になるほど罹患率が高くなります。軽度の場合、鎮痛剤、膝関節内にヒアルロン酸などの注射、関節外の腱、筋、神経にエコーを用いて注射、サポーター・装具治療があります。リハビリテーションにて膝の靭帯の滑走性を改善し、靭帯が安定する位置、つまり関節の負荷を減らす完全に膝がのびるようにすることも必要です。血流改善、除痛効果のある物理療法などを行います。症状を進行させないようにPRP治療(PCF-FD)も自費で行っております。重症の場合は手術治療を検討します。高位脛骨骨切り術(骨を切ってO脚を矯正する)、人工膝関節置換術などがあります。
半月板損傷
膝関節の両側に、三日月状の半月板があります。線維軟骨からなり、クッション機能があります。ケガや加齢などで断裂すると、曲げ伸ばしで、痛みや引っ掛かりを自覚します。膝を動かせなくロッキングになることもあります。
レントゲンでは評価困難で、MRIにて断裂部、断裂形態を診断します。半月板の外側は血流があり自然修復されることがありますが、内側は血流が乏しく修復されにくいとされております。症状は自然に改善することもありますが、リハ、薬などで改善しない場合は、変形性関節症に進行し、関節の動きが硬くなることもあり、半月板切除、縫合術などが行われます。
膝靭帯損傷
膝を構成する靭帯は、内側側副靭帯、外側側副靭帯、前十字靭帯、後十字靭帯があります。外傷、スポーツにより靭帯損傷することが多いです。関節内靭帯である、前十字靭帯、後十字靭帯損傷は、自然修復されにくく、関節外靭帯である内側、外側側副靭帯損傷は自然修復されやすいとされております。外傷直後はRICEが基本です。痛みが強く、ぐらぐらする場合は靭帯損傷を疑いMRIを行います。
前十字靭帯断裂は、スポーツで不安定性が強く、年齢やスポーツ競技などにもよりますが、手術治療が行われます。他の靭帯損傷では、多くは外固定、リハビリ、薬などで保存的治療となりますが、不安定性が残存し、スポーツに復帰が難しい場合は、手術治療になることがあります。
変形性股関節症
変形性股関節症は、寛骨臼形成不全(股関節を形成する骨盤の大きさが小さいこと)が背景にあることが多く、初期には立ち上がりや歩き始めに足の付け根に痛みを感じます。進行するとその痛みが強くなり、持続痛(常に痛む)や夜間痛(夜寝ていても痛む)が出現するようになります。簡単なセルフリハとして健康ゆすり(いわゆる貧乏ゆすり)がお勧めです。リハビリや薬などの保存療法で症状がとれない場合、骨切り術や人工股関節置換術が検討されます。
股関節唇損傷
股関節唇損傷とは、股関節の屋根部分である寛骨臼(臼蓋)の縁に付いている、繊維軟骨からなる関節唇と呼ばれる組織が損傷した状態を指します。
屋根の被りが浅い寛骨臼形成不全症や、インピンジメントに伴い損傷することが多いです。関節のひっかかり感、関節がずれる感覚などの症状に加え、股関節を曲げて、内股方向に捻ると痛みが誘発されることが多いです。
レントゲンや通常のMRI撮影では診断が難しく、放射状MRI撮影が必要です。治療法は、安静、痛みの出る動作をしない、消炎鎮痛剤の投薬やステロイド注射加療などの保存療法が主体になります。痛みが取れない場合は、関節鏡を用いて低侵襲に関節唇の修復を行う手術があります。
骨粗しょう症
骨粗しょう症は、骨の強度が低下して、骨折しやすくなる状態をいいます。骨折を起こすと身体機能の低下をきたし、生活の質が低下し、寝たきりになる場合もあります。特に大腿骨頸部骨折は、高齢でも手術治療が必要になり、脊椎圧迫骨折は、いつの間にか骨折ともいわれ、明らかな外傷がなくても日常生活動作で骨折することがあります。またいったん骨折すると背骨が変形し、背中が丸くなってしまい、杖や歩行器が必要になることもあり、骨折予防が必要になります。
骨強度の約70%は骨密度により決まり、残りの30%は骨質により決まるといわれています。女性ホルモンの低下とかかわりが深いといわれていますので、40代以降の女性では早めの骨密度検査をお勧めします。当院では腰椎、大腿骨の骨密度を計測し、また血液検査にて体の状態をチェックし、適切な治療をお勧めします。骨粗しょう症の治療の目的は骨密度の低下を抑え、骨折を防ぐことにあります。薬物療法、食事療法、運動療法を並行して行い、骨密度を高めましょう。
痛風
足の親ゆびのつけ根に痛みが発生することが多いですが、足関節、足の甲、アキレス腱のつけ根、膝関節、手関節にも激痛発作が起こることがあります。耳介に痛風結節や尿路結石が出来ることもあります。血液中の尿酸値が上昇(高尿酸血症)し飽和溶解度を超えると、関節内に尿酸塩結晶が生じます。この結晶を白血球が処理する際、痛風発作(急性関節炎)が発症します。高尿酸血症状態が続くと尿酸結石が腎臓に生じ、腎機能が悪化して腎不全になることがあります。原因は腎臓から尿酸を排出する機能が低下したり、暴飲・暴食、肥満、激しい運動などが原因になると考えられています。確実な痛風の診断は、発作中の関節の中に尿酸の結晶があることですが、通常は、血中尿酸値が高く痛風特有の強い痛み、腫れ、発赤などの関節の炎症があれば、診断は可能です。尿酸は絶えず身体の中で作られており、菜食を主とした食生活に切り替え、尿酸が体内で出来にくくするか、内服薬で血中尿酸値をコントロールします。定期的な血液検査(尿酸値と腎機能検査等)が必要です。
発作時の治療には、消炎鎮痛薬を用います。局所麻酔剤入ステロイド関節内注入も効果的です。前兆症状や発作の鎮静化にはコルヒチンも有効です。痛風発作が治まってから、尿酸値をコントロールする薬を長期間服用します。痛風の発作が起こらないからといって、薬を勝手にやめると、再発作を起こすことが多くなり、しっかりと薬を服用ください。
スポーツ障害
スポーツ障害は、スポーツによって関節、靭帯、腱、骨などに繰り返し外力が加わることで引き起こされる障害のことです。 オスグット病、シンスプリント、疲労骨折、腰椎分離症、野球肩、野球肘、テニス肘などがあります。筋の緊張や、筋や腱の微細な損傷が修復されずに繰り返されることで、損傷部位の炎症が持続し、修復がうまくいっていないこともあります。
練習前のウオーミングアップ、練習直後のアイシング、運動前後のストレッチなどで予防や改善がはかれます。硬くなった筋、神経、関節のリハビリ、ハイドロリリース、損傷部位の衝撃波などで改善することもあります。使い方がよくないと痛みが慢性化することもあり、リハビリにてフォームのチェックなども可能です。
ロコモ・フレイル
運動器の障害のために立ったり歩いたりするための身体能力(移動機能)が低下した状態を 「ロコモティブシンドローム(ロコモ、または運動器症候群)」といいます。進行すると、将来介護が必要になるリスクが高くなります。住民調査から、ロコモと判定されるロコモ度1以上の人は4590万人と推定されます。日常生活に支障はないと思っていても、ロコモになっていたり、すでに進行したりしている場合が多くあることが分かっています。いつまでも歩き続けるために、運動をして、ロコモの予防や進行を抑えて運動器を長持ちさせ、健康寿命を延ばしていくことが大切です。
フレイルは、「Frailty(虚弱)」の日本語訳で、 健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下が見られる状態のことを指しますが、適切な治療や予防を行うことで要介護状態に進まずにすむ可能性があります。
整形外科としては、移動機能が維持できるように、痛みをコントロールしながら運動をお勧めします。
交通事故・労災
交通事故の直後は、興奮状態となり痛みを感じにくくなっており、はっきりとした症状がなくても身体が損傷を受けている場合があります。よくある「むち打ち症」の場合では、数日経過した後に徐々に痛みが現れることがあり、慢性化する恐れもあります。交通事故にあったときは、一度検査を受けることをお勧めいたします。交通事故に伴う様々な痛みや体の不調など、まずはお気軽にご相談ください。
労災は、労働者(従業員、社員、アルバイトなど)が労務に従事したことによって被った負傷、疾病、死亡などです。通常の健康保険とは異なるため、すべてのクリニックで対応しているとは限らず、受診前に労災対応しているか確認する必要があります。 整形外科では、外傷が多く、通勤中のけが、転倒、物が落ちてきて当たったなどが多いです。日常生活動作と同様の動作で腰を痛めたなどは、労災が認められないことがあります。ご相談ください。